始まる直前何も考えずにボケーっとしていると、最初のショットで「これはヤバい。」と不意打ちを喰らってしまった。女の子(サンドリーヌ・ボネール)が劇の台詞を朗読しだすのだが、そこに漂う画面いっぱいの張り裂けそうな緊張感は、もしかするとスクリーンでしかわからないのかも知れない。
その女の子には、男でも惚れてしまいそうな美少年の彼氏がいるのだが、肝心の相手とはプラトニックな関係を通しつつも行きずりの英国水兵に体を許してしまう。彼は親友のボーイッシュな娘と付き合いだし、彼女も仲間内の他の男子と恋仲になる。夜遅くまで遊び呆けた後には、家庭内での母親との激しい喧嘩が待っていて、ピアラ自身が演じる父親との距離も終始微妙だ。
原題を直訳すると“私たちの愛に”だが、そこには兄も入れた家族の問題も含まれているだろう。彼女の家族を中心としてもいろいろな付き合いがあり、物語の最後イギリスに留学するまでの過程を通し、スクリーンの中ではそこに存在する空気が何度も火花を散らす。
日仏では満席だったものの『彼女の名はサビーヌ』は来春劇場公開されるみたいだし、今回の特集ではドワイヨンの『ピューリタンの女』も観とかなければいけない。
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