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change la vie , change le monde
こんなにもカメラの存在があたたかいなんて!

あまり知らない子供たちに(ときには大人にも)出演料を要求されることもあるし、靴を投げつけられることもある。しかし、カメラが決定的に暴力とならないのは、子供たちの側にもそれ相応に暴力のなかで生きているという自負があるからなのだろうか。

彼らはひたすらカメラに向かって話しかけてくる。仲間どうしで声を掛け合うときも、近くにシンナーを吸ってる奴がいるときにも。一人で親に反抗したり、学校に遅刻して行ったりするときも。立派な車で弟たちの前に凱旋するときや、人の話を聞かずにとうもろこしを投げ捨てるときだって。飯を食ったり、喧嘩したり、歌って踊るときにも、常にカメラを意識している。
時には、色目をつかって誘ってくる彼女たちさえいる。自然に振舞っているのは、犬やアヒルや牛くらいだろう。(いや、犬だって見事な合いの手を入れてくれた!)

しかし、カメラは恐ろしいものだ。冒頭や、その後何度か引用される水浴びのシーンから、ひっくり返った荷車の上で実況する子供たちのシーンまで。他にも細かいところや音声的な部分まで。明らかに意識的なレヴェルから日常的で無意識なレヴェルまで、そこには演出された部分が入ってくるし、逆に非人間的なあらゆるものが映り込んでしまう。そう、決して開けてはいけない扉だって!
そして隠された部分。『阿賀に生きる』の三年間にさんざん喧嘩した友との別れ。それぞれの道を歩みながらも、『阿賀の記憶』で再び集い、病に倒れつつもさんざん話し合ったこと。ケニアに送られてきた友からの数々の手紙、その死。そして、子供たちに気遣われながらの撮影。

この映画はその隅々まであたたかさに満ちている。

私たちは、そのあたたかさを全身で受け止めることができるだろうか。愛と反抗と、そして恐怖に堪え得る勇気を!いったい、別れ際に放たれた少年の言葉にどうやって答えるべきだろうか。
「お別れの祝福を!日本に帰るのなら、誰でもいいから一人連れてってくれよ!」

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「チョコラ!」監督の小林茂ともうします。
「チョコラ!」のご紹介ありがとうございます。「 阿賀に生きる」以来の盟友佐藤真監督の意思が映画の底流に横たわっています。何回も繰り返しこの映画のシーンを楽しんでいます。そこに、映画に登場してくれた人々の「覚悟」を感じながら。
[2009/06/04 Thu] URL // 小林茂 #- [ 編集 ] @
ご紹介、ありがとうございます。
「チョコラ!」の監督の小林茂と申します。深い思念を感じさせてくれる映画評をありがとうございます。佐藤監督には完成を見てもらいたかった、と思うとこころがゆれました。上映会場に彼がいてくれると思うとなんとなくそう思えるようになりました。この映画から私は元気をもらい、少し同行を続けたいと思います。
[2009/06/05 Fri] URL // 小林茂 #- [ 編集 ] @
Re: ご紹介、ありがとうございます。
こちらこそ、素敵な映画とコメントまで、ありがとうございます!

まさか、監督からコメントを寄せて頂けるなんて思ってもいなかったので、返事が遅れてしまって青ざめています。自宅にパソコンがない上にずぼらな性格なので、長い間自分のブログを確認していなかったのをお許し下さい。

監督がケニアまで旅をしたように、『チョコラ!』も今全国を旅しているようで・・・。僕も出来る限り周りの友達にも勧めまくります!
[2009/06/26 Fri] URL // オオツカ #- [ 編集 ] @

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オオツカ

Author:オオツカ
フーリエ主義の私立探偵。
東京を舞台に日夜事件を追跡中。

ある種のユートピアと化して、常にどこかで何かしら映画がかかっているという都市の状況に抗して。


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