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change la vie , change le monde
サリンジャーの死亡記事を目にする。

隠遁生活のなか、そうとうな作品を書きためていたはず。彼は、その物語を公開することが可能になるような遺言を残しているのだろうか…

それでなくとも、世間は膨大に編まれたであろう “グラース・サーガ” を望まずにいられない。自分のためだけに書かれたというその文章は、もはやただ書かれるためだけに書かれたオブジェとして存在しているのではないだろうか。そこには書くという行為を通してドキュメントの要素も介在するはずである。

もしかすると、『源氏物語』 や 『千夜一夜物語』 あるいは 『ユリシーズ』 『失われた時を求めて』 さらには 『大菩薩峠』 に 『非現実の王国で』 etc...のような長編をまた一つ人類が手に入れるかも知れない。

東海岸の隠者に思いを馳せて。

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知らないうちに 『ぼくら、20世紀の子供たち』 も観逃してしまっていた。


幸福な161分。
年が明けてからすぐに撮りたいテーマの撮影に入る。何日か放置した後、丸一日かけて編集終了。並行して、去年の夏に地元に帰ったときのテープを編集する。

その間、吉祥寺での『ライブテープ』のレイトショーも終わっていたし、新百合のワイズマン祭もすべて見逃した。気づけば映画館に足を運ぶのは今年初になってしまう。


                    ~…~ ~…~ ~…~


見逃したと言えば、去年のカネフスキーも『死ね、動くな、蘇れ!』以外見逃した。
『ひとりで生きる』アンコール上映の最終日に駆け込む。

――画面いっぱいの雪原に民謡を歌う声。馬を曳く男が、「ちょっとまってくれ!もう一回!」で巻き戻し。舞い上がる吹雪に合わせホワイトアウトでカットを入れる場面から始まる。

etc...etc...!!!

一番好きだったショットは、北方の街に逃れ、前作で死なせた女の子の妹(カンケイアリ)からの手紙を読むところ。画面右上へと広がる海。面して工場の外のでっかいパイプとなりの細い通路で。やや俯瞰。通りすがりの同い年くらいの同僚二人に絡まれ、憎まれ口で返答。手紙に小便をかけさせ、相手のコサック帽で液体をすくいそいつの頭にかぶせる。風に吹かれる手紙をよそに逃げた二人を追いかけていく…。

etc...etc...!!!

最後は、前作にも出てきたかと思われる風景。画面右前方から左奥へと伸びる浜での独白。次のショットで半ば溺れるかのように泳ぐ主人公をアップで捉え静止画。 Fin.


                    ~…~ ~…~ ~…~


偶然にもホールで知人に会う。前々から観ようと心に決めていたロジェが遅くまでやっていて、その人が続けて駆け込むと言ったので便乗。

――『あこがれ』の冒頭のような生理的反応。ふたりの主人公が並んでカンヌの海岸通りをベスパで走る。カメラは正面から。オープニングのフレンチポップが鳴り終わるとともに被写体が砂浜の方へと切れる。『ブルージーンズ』のクレジット。

とにかく、繋ぎが上手すぎる!動きで繋ぎまくっている!ヤバイ。

カンヌの街中や浜辺で、ちょっとした役者を忍び込ませて、ほとんどゲリラで撮っているはずなのに… 繋ぎさえしっかり繋げればこんなにも立派な映画になるなんて。キラキラ光って透き通っている。

そもそも、タイトルからしてアメリカへの憧れがひしひしと伝わってくる。
そう言えば去年観たなかでも、ドゥミのだって『ロシュフォール』や『シェルブール』でさえアメリカや映画それ自体に対する思いが常にちりばめられているし、『ローラ』なんてピッカピカの白いアメ車に、冒頭と最後のアイリスが最高だ!(『天使の入江』も観光客賑わう南仏の浜辺で始まり、終わったっけか) さらに、ピアラの『愛の記念に』の主人公も、アメリカ水兵に初体験を許してしまった。 
その辺の純粋な感情プラスコンプレックスには、もう涙するしかない。

最後は、同じ海岸通りを歩くふたりを後ろから。こちらも、『大人は判ってくれない』よろしく静止画で。 Fin.


――『パパラッツィ』の編集の巧みさには圧巻。




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オオツカ

Author:オオツカ
フーリエ主義の私立探偵。
東京を舞台に日夜事件を追跡中。

ある種のユートピアと化して、常にどこかで何かしら映画がかかっているという都市の状況に抗して。


日々の魔術の実践、あるいは独身者の身振りとしてのblog。



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